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三月だというのに、まだ朝は冷たい。
コートの前を閉じたまま、通勤の道を歩く。空気は冬の名残を引きずっていて、手袋を外すには少し早い。
そんな朝に、一本だけ、桜が満開になっている。
毎日通る道の、変わらない景色
通勤途中にあるその桜の木は、特別な場所に立っているわけではない。
住宅と住宅のあいだ、少しだけ開けた空の下。毎日通る道だから、そこにあることは知っていた。
でも、今日の姿は少し違って見えた。
まだ寒いのに、もう満開
ほかの木々は、まだ枝だけだ。
つぼみの気配すら見えないものもある。その中で、その桜だけが、迷いなく咲いている。
季節を先取りしたというより、ただ自分のタイミングで咲いたように見える。
ちょっとした朝のお花見
立ち止まるほどではないけれど、歩く速度を少し落とす。
上を見上げる時間は、ほんの数秒。それでも、淡い色が視界いっぱいに広がると、気持ちが少しだけ上がる。
朝のお花見、と呼ぶには短すぎる時間。でも、それで十分だ。
誰もいない花見
この時間、道にはまだ人が少ない。
写真を撮る人も、集まる人もいない。私だけが、その桜を見上げている。
にぎやかな花見もいいけれど、こういう静かな花見のほうが、今の気分には合っている。
季節は、揃っていなくてもいい
まだ寒いのに咲いていることに、少しだけ勇気をもらう。
周りと足並みを揃えなくてもいい。暖かくなってからでなくてもいい。咲くときは、咲く。
その潔さが、朝の空気を少しやわらかくする。
会えていない時間のまま
好きな人とは、まだ会えていない。
二月の続きのような三月を過ごしている。それでも、桜はもう満開だ。
何かが揃っていなくても、咲くものは咲くのだと、その木は教えてくれる。
気分が、少しだけ上がる
大きな変化ではない。
一日が劇的に変わるわけでもない。ただ、通勤の道に、小さな彩りが加わる。
それだけで、足取りがほんの少し軽くなる。
また明日も見るだろう
この桜は、しばらく咲いているだろう。
明日も、明後日も、同じように通り過ぎる。毎日少しずつ、花びらの様子が変わるかもしれない。
その変化を、急がずに見ていけたらいい。
三月は、こうして進む
まだ寒いのに、咲いている桜。
三月も、まだ静かなままで進んでいる。でも、その中に、もう小さな春は混ざっている。
通勤途中の一本の桜が、今日の朝を少しだけ明るくしてくれた。
それで十分だと思う。

