鍵を閉めた、その音で

何気ない毎日が好き

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鍵を閉めたときの音で、切り替わる。

玄関の前で、いつものように鍵を回す。「かちゃ」。その小さな音を聞いた瞬間、体の中のどこかが、すっと前を向く。

さあ、行くぞ。声に出さなくても、そう思っている。

朝の玄関は、まだ静かだ

家を出る直前の玄関は、朝の中でも特に静かな場所だ。

外の音は、まだはっきりとは入ってこない。家の中の気配も、そこで一度途切れる。内と外の境目に、短い無音の時間がある。

鍵を閉める前までは、昨日の余韻が、まだ体に残っている。

「かちゃ」という合図

鍵を回す動作は、毎日同じだ。

でも、その音には、ちゃんと意味がある。出かける準備が整ったという合図。迷っている時間が終わったという合図。

残っていた静けさが、その音を境に、少しずつ背中側へ回っていく。

戻れるけれど、戻らない

鍵を閉めたからといって、もう戻れないわけではない。

忘れ物に気づけば、また開ければいい。それでも、この音を聞いたあとは、気持ちが前に進んでいる。

戻れるけれど、今は戻らない。その選択を、自分でしている感じがある。

体が先に理解する

頭で考えるより先に、体が反応する。

背筋が少し伸びて、足の裏に重心が集まる。歩き出す準備が、自然に整う。

残っていた感覚は、消えたというより、きちんとしまわれた。

外の空気を、受け取る

鍵を閉めて一歩踏み出すと、外の空気が入ってくる。

冷たさや湿度、朝の匂い。さっきまで家の中にあった空気とは、少し違う。

その違いを感じたとき、もう切り替えは終わっている。

静けさは、持ち出せない

昨日から今朝にかけて残っていた静けさは、家の中に置いていく。

持って行こうとしなくていい。守ろうとしなくていい。鍵を閉めた音が、それを教えてくれる。

静けさは、必要なときにまた戻ればいい。

役割に戻る準備

外に出ると、名前を呼ばれる場所が待っている。

やることがあり、時間があり、人との関係がある。その世界へ入る前の、最後のひと呼吸が、この音だ。

準備ができたかどうかを、誰かに確認されることはない。自分で決めるだけ。

切り替えは、静かでいい

切り替えは、大げさでなくていい。

気合を入れなくても、理由を並べなくてもいい。「かちゃ」という音ひとつで、十分だ。

その簡単さが、毎日を続けさせてくれる。

また、同じ音のために

鍵を閉める音は、毎朝同じだ。

でも、その前に過ごした時間は、日によって違う。海だったり、緑だったり、何もしない夜だったり。

どんな時間を過ごしても、最後はこの音で外に出る。

鍵を閉めた、その音で。私は今日の役割へ向かう。静けさを置いてきたことを、ちゃんと分かったまま。

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