緑のあと、街に戻る瞬間

何気ない毎日が好き

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緑の中を歩いたあと、街に戻る瞬間がある。

はっきりとした境界線があるわけではないのに、足を進めるにつれて、空気が少しずつ変わっていくのが分かる。音が増え、色が増え、人の気配が戻ってくる。

まだ完全には戻りたくない。でも、ずっとここにいるわけにもいかない。その間にある時間が、私はわりと好きだ。

出口は、いつも静かだ

フラワーセンターの出口は、意外とあっさりしている。

華やかな終わり方はしない。緑が少しずつ減って、舗装された道が増えていく。それだけだ。

そのさりげなさが、気持ちの切り替えを急かさない。

音が先に戻ってくる

街に戻るとき、最初に変わるのは音だ。

車の走る音、遠くの話し声、信号の音。ひとつひとつは小さいのに、重なってくると、世界が急に現実味を帯びる。

緑の中では聞こえなかった音が、戻る準備ができているかどうかを確かめてくる。

視線が外に向き始める

緑の中では、足元や近くの葉に目が向いていた。

街に近づくにつれて、視線が自然と前へ、遠くへ向かっていく。信号、看板、人の動き。

自分の内側から、外側へ。気持ちの向きが、少しずつ切り替わっているのが分かる。

まだ、完全じゃなくていい

この時点で、気持ちが整いきっている必要はない。

緑の中で全部を済ませる必要も、街に戻る前に覚悟を決める必要もない。ただ、戻る方向に体が向いていれば、それで十分だ。

途中のままでいられる時間が、ここにはある。

街は、変わらずそこにある

緑の中にいたあいだ、街が消えていたわけではない。

用事も、時間も、人との関係も、すべてそのまま残っている。ただ、少し距離を置いていただけだ。

戻ってみると、街は思っていたよりも変わらない。その事実が、少し安心につながる。

戻ることは、負けじゃない

静かな場所から街に戻るとき、どこかで「戻ってしまった」という気持ちがよぎることがある。

でも、それは後退ではないと思っている。整えた自分を連れて、日常に戻るだけだ。

逃げたのではなく、準備をしてきた。その違いは、大きい。

少しだけ、余白を残したまま

街に完全に溶け込む前に、緑の感覚を少しだけ残す。

歩く速度、呼吸の深さ、視線の低さ。全部は無理でも、どれかひとつだけ持ち帰る。

それだけで、戻り方が少しやわらかくなる。

また、戻れる場所がある

街に戻る瞬間があるということは、戻らなくていい場所があったということだ。

それは、なくならない。次に必要になったら、また行けばいい。

緑のあと、街に戻る。その繰り返しで、私は日々をやり過ごしている。理由はないけれど、そのやり方が、今の自分には合っている。

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